初めて聴いたのに、懐かしかった。
In The Aeroplane Over The Sea/Neutral Milk Hotel 1998年2月10日
The King of Carrot Flowers, Pt. One
The King of Carrot Flowers, Pts. Two & Three
In the Aeroplane Over the Sea
Two-Headed Boy
The Fool
Holland, 1945
Communist Daughter
Oh Comely
Ghost
Untitled
Two-Headed Boy, Pt. Two
20世紀初頭風テイストのジャケットのインパクトに魅せられ、気になってTSUTAYAで借りてみようとするものの商品ラインアップになく、仕方なくYouTubeでチェックしたのが、このアルバムとの出会い。
開始してすぐに、これはとんでもない音や…と思いましたね。
それからはもう、定期的に思い出しては聴く、って作品のひとつとして定着しています。なんせ、30回以上聴いてますから(比喩表現でなく、数字として本当に残ってるのは結構すごいと思うんですよ)。
どうしてもレビューしたかったので、今日はこれを取り上げたいと思います。
■一度も聴いたことがない音楽を、懐かしいと思った。
まず、どこがどう、とんでもない音やと思ったのかというと…
一回目聴いたときに懐かしい、って思ったんですよ。一度も聴いたことないはずなのに。
アコギから伝わる音像のあたたかみ*1のあるコードストロークから始まる冒頭の『The King of Carrot Flowers, Pt. One』で、ぐっと掴まれたあと、怒涛のように、ひとつの劇世界の中に引き込まれていくんですよね。
音そのものも、アコーディオン・バグパイプ…果てはノコギリ(横山ホットブラザーズ的なヤツ)まで使われている「音世界の豊かさ」もこのアルバムの大きな特徴。めちゃめちゃファンタジックです。昨今のインディーロックの源流に近い音楽だと思いますね。
■何回聴いても、あっという間に終わる。
一方、歌詞の内容はいわゆる、子供のころに思い描くような空想的なものであったり、はたまたもっとパーソナルな性の目覚めだったり、DV、さらには「アンネの日記」にインスパイアされたものまでもテーマだったりと様々。
にも拘わらず、この詩世界の「一本通った解釈」をめぐっていろいろと紛糾した面があったようで…。特に「アンネの日記」をめぐっては、そのせいでそれをもとにしたコンセプトアルバムだ、と決めつける趣もあったそう(これも作った本人、イヤやったやろうなぁ…と個人的には思います)。
アルバム全体を通して聴いた感覚としては、ひとつの舞台を見たような印象で、あっという間に終わっちゃった、40分経ってた。みたいな感じ。それぐらい、気持ちよく過ごすことができる感覚がありましたね。この感覚が「何回聴いても変わらない」のがすごい。
■ハイテクではないけれど、バンドに宿る魔法はある。
それこそ、ハイテクな音楽に疲れた人にぜひ聴いてほしいと思うんですよね。
ライブの映像も目にしましたが、ほんと清々しいぐらいにバンドメンバーのみの力って感じで、音楽の原点を目にしたような感覚がありましたね。楽器の持ち替えとかもせわしない感じ。
正直言うと、決して演奏がうまいとかそういうバンドではないし、このアルバムも歴史的名盤クラスってのは過大評価、という方も少なくはないバンドです。
実際問題、当初は5500枚程度の出荷と、そこまで売れていたわけではなかったのに、ネット黎明期にさしかかってからカルト的な人気を急に博してしまったせいでボーカルのジェフ・マグナムが精神的にも疲れ切ってしまい表舞台に出るのを嫌がるようになってしまった*2ってのも、目立つべきではない存在だったのかもしれないとも思うところ。
ただ、鳴っている音にはいわゆる「バンドマジック」のようなものを存分に感じられると思います。その魔法はぜひ一度、体感してみてほしいですね。