いちいち、音楽を考える。

音楽はフィーリングも大事だけど、いちいち考えてみたくなるんです。

たったの43分間で、宇宙へ行ける。(PYRAMID/ROVO)

43分間で、宇宙へ行ける。

 

PYRAMID/ROVO 2000年4月19日

PYRAMID

まず話しておきたいのは、今日紹介する一枚は「アルバム」だということ。そして、1曲しか入っていないということ。なおかつ、収録時間は43分16秒ある、ということ。

「何か宇宙っぽい、でっかい音楽をやろう」とのコンセプトで結成されたバンドとはいえ…これはえげつないぞ、と思いました。ちなみに、この一枚との出会いは、たしかJAPANかなんかで名前だけ確認していて、サークルの先輩にひょんなきっかけからもらったのがきっかけだった気がします。で、当時はその長さで敬遠して、長らくの間iTunesの中で眠りについていたんですよね。

では、なんでその眠りを起こすことになったのかと言いますと…私、実は毎日寝る前にヨガやってましてね。その際に、邪心を捨てて無になれるような音楽はないか…って感じで探していたんですよ。で、ふと思い出したのがROVOだった、というわけです。(ヨガに集中したいから、できれば長い曲の方がありがたかった)

今回ご紹介する「PYRAMID」は、まさにその名の通り、ピラミッドのような楽曲と言いますか。ゼロから頂点まで積み上がっていく様子が精緻に描かれている楽曲となっています。たどり着く先は、頂点どころか、宇宙…まさに、40分で宇宙まで飛んで行けるかのような仕上がりです。

かなり長いとは思いますが、少しでもいいので、まずは聴いてみてほしいと思います。

■瞑想するような、天への祈り。

 

今回は一曲なので、ブロックに分けてお話ししていきたいと思います。

まず前半15分ぐらいまでは、静かに瞑想するような、そんなフィーリングから入っていきます。実際のピラミッドの建立イメージと重ね合わせると、「天への祈り」のような情景が浮かびます。

※7月~10月は、ナイル川の氾濫期。通説ではピラミッドは農民の仕事がなかった時期に作った、ってことになっているみたいですが、どうもその説は怪しいとのこと。

それはさておき、この深遠さが気持ちを非常にクリアなモノにしてくれますね。邪念が抜けていくような様子も感じられると思います。

■ジリジリと、焦らずに土台を作っていく…

続いて15分を過ぎたあたりから、ドラムとパーカッションのビートが主体となって、力強くも精密なビートを重ねていきます。このビートが、まさにピラミッドの基礎を作っていく場面と重なります。

やっぱ、4500年も崩れていない建造物なんですから、それ相応の「下地」って当然、ありますよね。一聴する限りでは、同じことを繰り返しているようにも感じますが、その繰り返しの中からちょっとずつ、ちょっとずつ、ジリジリと手数が増していく様子が、心をグッと捉えていきます。

■下地を積み上げたからこその、クライマックスの高揚感。

で、一番のクライマックスはラストの5分ぐらい。

もう、お祭り騒ぎですよね。ピラミッドが完成に向けて、いよいよ頂点に※キャップストーンを載せるぞ!ってぐらいのお祭り騒ぎ。

※ピラミッドの頂上に積まれるもののこと。太陽神ラーの魂が宿る場所と信じられていた。ピラミッドの頂上にキャップストーンをのせるときには式典のようなものが催された。外国の要人を招待して盛大に行われ、エジプトがどれだけ大きく、尊敬できる国であるかを誇示したとされる。

やはり、下地を長い時間かけて積み上げてきた成果からか、やっと来たぞ!っていうとてつもない高揚感があって、もう「気持ちいい!」ってシンプルな感情と「ここまでやってきたぞ!」っていう充足感がクロスして、たまらないんですよね。

■宇宙に辿り着くまで、たったの43分間。

…という43分間の果てしないピラミッドという旅。見える世界は、ピラミッドと言うか、もはや宇宙。ただ、見方を変えれば、宇宙に辿り着くまで、たったの43分間とも言えるわけで。そう考えると、この旅にはとてつもない「ロマン」があるんじゃないか。そのように私は思います。

 

★この記事で紹介した楽曲はこちら。

<アルバム>

PYRAMID

PYRAMID