ムダなく、聴きやすい一枚。
Saosin/Saosin 2006年9月26日
It's Far Better To Learn
Sleepers
It's So Simple
Voices
Finding Home
Follow and Feel
Come Close
I Never Wanted To
Collapse
You're Not Alone
Bury Your Head
Some Sense of Security
セイオシンを知ったのは、大学の後輩の紹介。思えば、彼がいなかったらこのジャンルをガンガン聴くってことをしなかったかもしれないなと思います。ぶっちゃけ、得意なジャンルではなかったですからね。(確か、当時はメタルなどの「見るからにわかりやすい」テクニカルなジャンルはまだ好んで聴いていなかったと思う)
ただ、そんな私の壁を大きく壊してくれたのがセイオシン。マジな話、すぐハマりましたね。聴きなれてきたから聴けるようになった、とかではなく、一聴してすぐ、おーこれはカッコいい!ってなったことを覚えています。
彼らの持ち味はそれこそ「全て」と言ってもいいんですけど、コーフ・リヴァー氏(当時)のスーパー高音ボーカルに付随するメロディの美しさ、演奏陣のタイトかつムダのない精度の高いまさに「聴きやすい」サウンドがとにかく素晴らしいです。結構な難易度のリフを弾いているとは思うんですけど、「サラッと」しているんですよね。「ドヤァ」ではない、断じて。その辺りがエレガントで、それこそ万人におススメできる作品だと思います。
今回は、そんなセイオシンのセルフタイトルとなった1stアルバムから、コレを聴いてくれ!という3曲について、お話ししていきたいと思います。
■自分の生きる価値は?という、シリアスな問いかけ。
出だしから、不穏なフィードバックに、タイトなタムワークが絡んで来て、ゾクゾクするような高揚感がある楽曲です。まさに、オープニングナンバーにふさわしい曲だと思います。
で、この「不穏さ」は、歌詞にもよく表れています。とにかく連呼されるフレーズがこちら。
What is my body worth?
(It's Far Better To Learn/Saosin)
自分の生きる価値は?と何度も何度も反芻するように問いかけてくるんですよね。この問いかけは、どこまで行ってもついてくる…といった、哲学的な内容になっています。
この手の質問に答えを見出そうとすることって、苦しいですよね。なぜなら答えは出ないから。だけど、それでも自分で道を選んで生きていく他ないわけで…。その事実から目を背けずに、おそらくこの楽曲は作られたんじゃないかと思います。サウンド面のシリアスさが、それを物語っていると思います。
■バンドを揺るがすシビアな問題に対する「やりきれなさ」。
私自身は、この曲がイチオシです。とにかく、ボーカルの突き抜け度合いがえげつない。ファルセットでなくどこまでも突き抜けていく高音は非常に気持ちいいですね。
ただ、こちらも歌詞はよくよく調べてみると案外重いテーマになっているんですよね。
I never thought you would lose yourself
The hardest part was falling down again
(And getting up again)
I'm a fool to watch you walk away
Are you bothered by the choice you made?(It's So Simple/Saosin)
なんか、人間関係で揉めたかな?とは思えど、背景がわからないとどうしようもない感じで、歌詞の理解が結構難航したんですよね。
で、調べものといえば、やっぱりwiki(笑)。ってことで調べてみた結果、どうやらこの出来事について書いたんじゃないか?って思うんです。
2003年6月17日にリリースした「Translating the Name EP」はネットを通じて話題になり、即座に人気に火が点いた。
この余波からバンドは1度もライヴを行っていないにもかかわらず多数のレコード会社からのオファーを受ける。しかし、シンガーであるアンソニー・グリーンはEPをリリースした後にバンドを脱退してしまう。
この時のアンソニー・グリーンはとても強いホームシックにかかっており、家族が恋しいと漏らすようになっていた。
彼は自分が脱退することで“バンドにシンガーがいなくなる”という厳しい状況に追い込んでしまうことを申し訳なく感じていたが、
「これ以上ここにいたらおかしくなってしまいそうなんだ」と言って脱退した。(wikipediaのSaosinのページより)
ボーカルって、やっぱりバンドの顔。それがいなくなるってのは非常に重大な問題なわけですよね。(セイオシンは、高音のメロディーをきちんと歌える正式なシンガー探しを何度も行っている)その重大な問題に対するやり切れなさも、もしかしたらこの楽曲に含まれているんじゃないか。そんな風に私は思うんですよね。
もっとも、このアンソニー氏は現・ボーカリストとして復帰しましたが、今度はリードギターのジャスティン・シェコウスキー氏が「脱退させられた」と語るなど、ちょっとゴタゴタしとるなぁ…ってのが残念ではありますが…それだけ楽曲に対してシビアに向き合っているんだろうな、と思います。
■「自分を」見つければ、ひとりじゃない。
こちらはストレートなバラードナンバー。全体を彩る淡泊ながらも拡がりのあるコーラスワークと、ディレイを多用したギターサウンドが美しい楽曲です。
今までの楽曲は歌詞が抽象度が高めでわかりにくい部分もありましたけど、こちらの楽曲は非常に素直な歌詞だと思います。
She's just like him
Spoiled rotten
Confused by the lies she's been fed
And she's searching for no one..
(But herself)
Her eyes turn to green and she seems to be happy
That she is here
And this time I think you'll know...You're not alone
There is more to this, I know
You can make it out
You will live to tell(You're Not Alone/Saosin)
「ウソ」(←おそらく、お前はダメな奴だとか生きてる価値無いとか、そういう類のモノ)で飼いならされていた女の子が、自分自身を見つけたときに目が見えるようになり、幸せを掴んだ、というエピソードから「自分さえ見つけることができればひとりじゃない」ってことを伝えているんですよね。
そんなメッセージ性も含めて、エモーショナルな作品だと思います。
■聴きこもうとしなくとも、シンプルに「カッコいい」でもOKなアルバム。
ずいぶんと、哲学的なメッセージが並びましたが…ちなみに、このアルバムは聴きこもうとしなくとも、シンプルに「カッコいい」でもOKなアルバムだと思います。それぐらいに、「聴き方」に幅を持たせられるほど、サウンドのレベルがとても高いアルバムです。
しかも、サウンドレベルが高くとも「自己満」のようなフィーリングは薄く、メロディーのクセが少なく聴きやすい作品だと思いますので、こういうポストハードコアとかあんま聞かない…って方にもおすすめの作品です。
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