本気だからこそ、おもしろい。
Vキシ/レキシ 2016年6月22日
牛シャウト!
KMTR645 feat.ネコカミノカマタリ
一休さんに相談だ
古今 to 新古今
やぶさめの馬 feat.ハッピー八兵衛
SHIKIBU feat.阿波の踊り子
寺子屋FUNK feat.シャカッチ
旧石器ベイベ feat.足軽先生
刀狩りは突然に
最後の将軍 feat.森の石松さん
おそらく、今日本でも一、二を争うほど「面白い」アーティスト、レキシこと池田貴史氏。一体、なぜにここまでおもしろいんやろう?って聴きながら考えていたんですが…やっぱり、「全力だから」だと思うんです。
どのアルバムを聴いてもそうなんですが、とにかく、楽曲面のツッコミどころが一切、ない。べらぼうに上手いし、品目数も本当に豊富。理想の晩御飯ってぐらいにバランスがイイんですよね。だからこそ、耳を「笑い」へと一点集中できるんですよね。もしこれが、演奏面がしょっぱかったり、ミックスに「違和感」があったりすると、どうしても「?」が浮かんでしまうじゃないですか。この「疑問」を挟ませないほど精度が高い楽曲群…月並みではありますが「すげー」って思うんですよね。
今日はそんな「すげー」一枚の中から、特に好きな3曲について、お話ししていきたいと思います。
■史実をただなぞるだけじゃなくて、奥にある想いや理想まで膨らませたハッピーな方向性。
キュウソネコカミとの、勢い抜群のコラボレーション。楽曲面はキュウソフレーバーの方が強め。ですが、違和感なく池田氏も入れていると思います。文脈を共有できていますしね。
見た目とタイトルでわかるとは思いますが、モチーフは大化の改新。そこから広がる着想は、実に下らない。下らないんだけど、徹頭徹尾下らない「だけではなく」、そこにハッとさせられるようなフレーズがポンッと乗せられているんですよね。
全てを変えることは僕にはできないけど
キミが飛ばしたくつを探すことなら出来るさ
明日を変えることは僕には出来ないけど
大化の改新の一撃キュキュキュ キュキュキュっキュー
蘇我入鹿鳴いているか?
キュキュキュ キュキュキュっキュー
この声は聞こえているか?
キュキュキュ キュキュキュっキュー
今度生まれ変わったなら
キュキュキュ キュキュキュっキュー
キミと蹴鞠で遊ぼうか(KMTR645 feat.ネコカミノカマタリ/レキシ)
イルカの鳴き声+蘇我入鹿+いるか?の三重韻もすごいんですけど、最終的には「友情」ストーリーに仕立てられているのが、グッとくるというか、ひねりが効いてますよね。
史実をただなぞるだけじゃなくて、その奥にある想いや「こうだったらいいのにな」っていう理想まで膨らませたハッピーな方向性を築き上げているところがステキだと思います。
■「どうでもいいこと」は、気にしないが吉。
※映像がなかったので、iTunesで…
この曲は冒頭からすごい。古今和歌集と新古今和歌集について、「意識高い系w」らしき方々がうんちくをつらつら語っているところをホーン隊が「黙れ!」と言わんばかりにカットインするさまが非常に痛快。
で、カットインはしたものの、メッセージは非常に平和。チャールストン調も相まって、全体をピースフルな空気が覆ってくれています。
新しいとか古いとか そんなの今大事なこと?
君と僕とが楽しければそれでいいじゃない それでいいじゃない(中略)
キミと歌える歌があるから
とてもステキなそんな気分さ
キミが歌える歌があるなら
どちらでもいいよ 古今と新古今
どちらでもいいよ 古今と新古今(古今 to 新古今/レキシ)
マジで、どうでもいいことは気にしないが吉、ですよね。どうでもいいことを気にし始めたら、ホント楽しくなくなりますしね。そんな「楽しい」って気持ちの原点を教えてくれる、こちらも非常にハッピーな楽曲です。
■そうか、彼は「やさしすぎた」のか。
ラストを飾る、3連符バラード。このアルバムでは、もっともシリアスな作品。
なんせPVがもう切ないですよ。歌詞のストーリーとも非常にマッチしていますし、池田氏の絶妙な「優しいけどヘタレ系ダメ男」感がすばらしい。
この楽曲は文字通り「徳川慶喜」がモチーフなんですけど、私、彼のことあんま好きじゃなかったんですよ。なんというか「負けた感」があるっていうか。系譜を継ぐことができなかった情けない人、みたいなイメージを持っていたんです。
だけど、そんなフィーリングも歌詞でポーンとひっくり返されたんですよね。
明日からまたひとりだって
いうのは平気だけどまだ
あなたとはもう終わりだって
いうのは平気でしょうか?やさしすぎたあなただからここまできたの
もう幕府なんて終わらせていいのよ
はなればなれ運命ならば忘れてしまおう
あなたあなたは最後の将軍(最後の将軍 feat. 森の石松さん/レキシ)
そうか、彼は「やさしすぎた」のか。
ズルズルと気弱に引っ張ってきたんじゃなくて、やさしすぎた、のか。そういえば、元ジャイアンツの斎藤雅樹氏が開花したきっかけも、当時の藤田元司監督に「お前は気が弱いんじゃない、やさしいんだ!」と言われてパラダイムががらりと変わって活躍したんでしたよね。
それはさておき、自分の視点だけだと平気だけど、相手を思うと平気…なのかな?と気持ちがぐらつくところがまさに「やさしすぎる」ところですよね。松たか子氏のタフで芯の強い歌声とのコラボ効果もあって、より「やさしすぎる」像が鮮明になっていますよ。
こういう必殺技も持っているからこそ、笑いも活きてくるんですよね。素晴らしいバラードだと思います。
■楽しい!って気持ちを呼び起こしたり、思い出したりするのに最適な一枚。
このアルバムを聴いて改めて思ったのが、音楽って楽しいよねってこと。私自身も頭でっかちになってしまって音楽にあれやこれやとイライラする時期があったので、この一枚に出会って原点を見直すきっかけになりました。
楽しい!って気持ちを呼び起こしたり、思い出したりするのに最適な一枚だと思います。
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