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自分たちの「解剖」ができる稀有な存在。(Dr.Izzy/UNISON SQUARE GARDEN)

自分たちの「解剖」ができる稀有な存在。

 

Dr.Izzy/UNISON SQUARE GARDEN 2016年7月6日

エアリアルエイリアン
アトラクションがはじまる(they call it “NO.6”)
シュガーソングとビターステップ
マイノリティ・リポート(darling, I love you)
オトノバ中間試験
マジョリティ・リポート(darling, I love you)
BUSTER DICE MISERY
パンデミックサドンデス
8月、昼中の流れ星と飛行機雲
フライデイノベルス
mix juiceのいうとおり
Cheap Cheap Endroll

おそらく、デビュー時(というか、火がついてから)から温度が一切変わらず追いかけ続けているバンドって、私にとっては彼らが唯一の存在かもしれないですね。最初こそこの「クセ」のある声になかなか馴染めなくて敬遠しかかっていたけれど、段々と「クセ」が自分の中でポジティブになっていったのを思い出しながら今、この文章を書いています。

ユニゾンって、私の中では非常に異色なバンドでしてね。なんというか、大体のバンドって「めちゃくちゃ好きな一枚」があって、それに一極集中的になってあんまり他の音源を聴かない…みたいなことが起こりがちなんですけど、どのアルバムも割とバランス良く聴いている、と言いますかね。

それゆえに、どの作品を一番最初にレビューしようか、すごく迷いに迷って、なかなか筆が進まなかったんですよね。実際、いまも改めて聴き直しながら書いているのでものっすごい時間がかかっています(書こう!と思い立ってからもう1時間30分は経っている。聴き直しが2周目へ…)。

そんな中、この「Dr.Izzy」を取り上げようと思ったきっかけはものすごく単純なことでして。要は、今までのアルバムで一番好きだから、なんですよね。思い入れであれば、ぶっちゃけ他のアルバムもかなり強いものがあります。特に、1stについては大学4回生の大事な時期にコピバンやらせてもらってひとつの「壁」を破るきっかけになりましたしね。ただ、それでも、今回の作品を取り上げたのは、間違いなく、今までで一番好きだから、なんですよね。

一応、ユニゾンを全くご存知ない方のためにカンタンに特徴をまとめますと…「超強力な楽曲のひな型」を持っていて、なおかつその「ひな型」を育てられるぐらいのとんでもないレベルの技術が光るポップなロックバンド、です。

もしかしたら「ひな型」って言葉に引っかかる方もいるかと思いますので説明しますと…ユニゾンの楽曲は、基本的に「過去作品」を振り返ると、「おっ、この曲のアップデート」かな?と思わせるものがあるんですよね。

ex.)「オトノバ中間試験」と3rd収録の「場違いハミングバード」など。

オトノバ中間試験

オトノバ中間試験

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

場違いハミングバード

場違いハミングバード

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

で、こういう「ひな型」タイプのバンドって、どうしても「同じような曲ばっかり…」みたいなレッテルを張られがち。正直、ユニゾンに対してそういうことを思っている方も少なくはないと思います。ただ、ユニゾンにはそのひな型を「解剖」できる技術があるんですよね。だから、今まで私は飽きずに聴き続けてこれています。ちなみに、この「解剖」というのが当アルバムのテーマです。

さて、前置きが長くなりました。それではそんなユニゾンの当アルバムの中でも「これは…!」と思った3曲について、お話ししていきたいと思います。

■「解剖」に成功した、代表作中の代表作。

 

代表作中の代表作。当アルバム、唯一のシングル曲。だから正直、取り上げるかちょっと迷ったんですよね。アルバムのレビューを書く中で、シングル曲が立ち上がり過ぎになる感じが、個人的に好きじゃないんでね。

ただ、それでもこれを取り上げた一番の理由が、アルバムからまったく浮いておらず、なおかつ「解剖」の結果進化した楽曲っていう、アルバムのテーマにも則ることができている楽曲だからなんですよね。この楽曲は1stというかそれ以前からの代表曲「箱庭・ロックショー」、前作収録の「instant EGOIST」を一段進化させた、っていう印象を持っています。

どういう点が進化したかっていうと、やっぱりまずは演奏面ですよね。変則的なリズムがもたらす一筋縄ではいかぬ苦みと、歌メロのスウィートなメロディーの甘みとの絡み。まさにタイトル通りというかね。元々うまかったのに、さらに進化し続けるところがすごいなぁと思います。

で、歌詞も読もうとすれば「ギリ届く」っていう抽象度の高さがいいですよね。

平等性原理主義の概念に飲まれて 心までがまるでエトセトラ
大嫌い 大好き ちゃんと喋らなきゃ 人形とさして変わらないし

(シュガーソングとビターステップ/UNISON SQUARE GARDEN)

みんな一緒、とか世間的にどうだこうだ、と合わせてるうちに、自分の心がどっかいってしまってないか?ちゃんと自分の感情を感じてみようぜ、ってことを伝えているんだと思うんですけど、この「少し頭を動かして初めてわかる」感じが私はスキですね。こうすれば「届きたい!」と願う人間だけに届きますしね。

紛うことなく大名曲だと思いますので、まずこの曲をきっかけに…と思います。

シュガーソングとビターステップ

シュガーソングとビターステップ

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

■スパイス効いてるけど、「食べやすい」仕上がり。

※映像がないので、iTunesを…

BUSTER DICE MISERY

BUSTER DICE MISERY

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

こちらはそれこそ歌詞に出てくる「あぶくたったシチューの隠し味」にするがごとく、様々なフィーリング(1番Aメロはスカ寄りだけど、2番Aメロ冒頭はダブっぽいとか、そういう細かいとこも含めて)がごった煮されたような楽曲。アルバム中盤にしてこの濃度はなかなかスゴイです。たいがいは多少「ダレがち」になるラインですしね。

とにかく一聴して一番驚いたのが、間奏の攻めまくり度合いですよね。もはや何をやっとるんだ!と言いたいぐらい(笑)。なんていうか、イメージとしてはヤバい液体を作ってる科学者的な感じですね。それこそ、コピーするにはこういうのが一番手ごわいんですが…

そして、この曲も歌詞がイイ。現代を皮肉りながらもこれまた「届く人にだけ」届くモノになっていますね。

破竹無敵のチャンプだって一度の汚職でチャラになるらしい
常世の業はげにげに深い ラルラルラ 冗談がうまくなる

手術台に乗せられるので どこを晒してどこを隠すのか
頭キラせて骨断つのは ラルラルラ 骨が折れまする

(中略)

BUSTER DICEを転がして 行く末は塵花火?
オブジェクションは声にならない なんてあんまりな罰

(BUSTER DICE MISERY/UNISON SQUARE GARDEN)

なんというか、特に今年はこういうことが多かった気がしますよね。ひとつ「汚職」のレッテルを貼られてしまったら、それを挽回する機会はいわば「手術台」の上だけ。もちろん、こんなの十分な機会でもなんでもなくて、できるのは晒すか隠すか…そして行く末は花火のように散って、反対意見(オブジェクション)は声にならず…

世知辛いよなぁ、って思いつつも、それを「世知辛いぞ!」とか「反対意見も聴け!」みたいな幼稚な表現でなく、詩的表現にまで昇華できているところに作詞担当・田淵智也氏(Ba.&Cho.)の成熟している部分を感じますよね。

このような中身がスパイシーな楽曲ですけど、エバーグリーンな斎藤宏介氏のボーカルと相まって、スパイスが効き過ぎずに食べやすさは維持しているってところも出色だと思います。

■「伝わり方」のコントロールがきちんと利いている楽曲。

 

こちらはジャジーながらも軽快さが光るナンバー。しっかし、毎度ながら懐の深さは驚異的。鈴木貴雄氏(Dr.&Cho.)の引き出しの多さはホンマものすごいですわ。なんというか、チャレンジングなアプローチって、しょっぱいと浮いちゃうんですけど、どんな曲を叩いていてもそういうモノを微塵も感じさせないところがリスナーに対して誠実だなぁといつも思います。(もっとも、鈴木氏はジャズのフェスに出たりしていて、当楽曲のアプローチは得意だとは思いますがね。)

この楽曲も音像はとってもカラフル。ミックスジュースのような色彩感覚が浮かびますね。その像を追いかけているだけでも楽しい楽曲ですけど、この曲は今までよりも「わかりやすく」背中を押してくれる歌詞になっています。

昨日の理想が今日砕けちゃっても 机の奥に入れてstill trust in my heart
ちゃちな理性に挟まれて心ぐるぐる悩むぐらいなら 荷物を捨てて飛び出そう

(mix juiceのいうとおり/UNISON SQUARE GARDEN)

悩んでいる人にとっては、こういう「わかりやすい」アプローチが欲しい、ってこともあるんですよね。そこも理解して歌詞を書いてはる感じがしますね。その高い「歌詞を書くって技術の応用力」というか、「伝わり方」のコントロールがきちんと利いているところが田淵氏の歌詞の魅力だなぁと思います。

元気になれる、わかりやすい一曲だと思います。

mix juiceのいうとおり

mix juiceのいうとおり

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

■最終的には、全曲レビューするかも。

取り上げたのが3曲だけなのになかなかのボリュームになりました。とりあえずいったん筆を置きますが、もしかしたら、最終的に全曲取り上げることになるのかもしれないですね。それぐらい、このアルバムは気に入っています。加えて、次の作品ではどんな姿を見せてくれるんだろう?と興味津々。

さらにこのアルバムを聴きこんで、そのときを待ちたいと思います。

 

★この記事で紹介した楽曲はこちら。

<アルバム>

Dr.Izzy

Dr.Izzy

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • J-Pop
  • ¥2400

<楽曲>

mix juiceのいうとおり

mix juiceのいうとおり

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes
シュガーソングとビターステップ

シュガーソングとビターステップ

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes
オトノバ中間試験

オトノバ中間試験

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes
BUSTER DICE MISERY

BUSTER DICE MISERY

  • UNISON SQUARE GARDEN
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes