乳清は、捨てるものじゃない。
乳精/YOGURT-pooh 2002年9月4日
R&R side seater
青い胸騒ぎ
アウトサイダー
八月のエコー
Future World
夏は陽炎
ロマンスプロバイダ
マイナーディスコ
ループ (remix)
色彩の歌
セレナーデ
彼らとの出会いは、中学入りたての頃でしたかね。サラリーマン風の男がビジネスという荒波を乗り越えていくっていう内容のPVを観て、「なんか、イイ!」って思ったのがきっかけ。ほんでその楽曲が収録されているアルバムも聴きまくって、こりゃ次回作も楽しみや!と思って、満を持して登場した「次回作」が今回紹介するアルバム、乳精。
ちなみに乳清(こっちが正式な表記)とは、ヨーグルトの上澄みの液体のこと。一見すると、なんか気持ち悪くて捨てる人が多いみたいで、最近のデカいサイズのヨーグルトには「高栄養」であることを盾に、捨てるなという文言が書いてあることが多いですね。
それはさておき、このアルバムも非常に「高栄養」といいますかね。なんせ、彼らの一番のストロングポイントはそのアレンジ力。めちゃくちゃ聴きやすいし、飽きない。正直、もっと売れてほしかったバンドランキングなるものがあったら、確実に3本の指に入ります。
そんな彼らの文字通りヨーグルトのような、甘酸っぱいロックに触れてみてほしいなと思うんです。
■青春の「痛み」と成長。
こちらは、アルバム収録の先行シングル。
いやー、シンプルにメロディーがほんっとにキレイですよね。口ずさみたくなりますもんね。そしてキレイなだけじゃなく、ギターの音は耳を割くような鋭い歪み。この音像が青春独特の「痛み」を上手く表現していると思います。
この「痛み」は、歌詞の言葉の選び方にも出ているなーと思うんです。
めぐる季節が 青い胸騒ぎ
止めてくれたら
絵になる言葉 探しはしない
君の視線に(青い胸騒ぎ/YOGURT-pooh)
青臭い感情が、どうしても素直な感情の表現を邪魔することって、ありますやん。その感情が時と共に落ち着いていけば、いわゆる「カッコつけ」をせずに、相手と真っ直ぐ向き合うことができるのに…っていうことを、歌謡曲時代のような美しい日本語で描かれています。
ぜひ、恋愛の痛みやらを思い出しながら聴いてほしい一曲ですね。
■新しい季節の、期待と不安。
こちらは夏の終わりを「秋が寂しいんだ」という一語でバシッと表わせているミディアムナンバー。八月のエコーっていう、「残り香」を表せたタイトルもいいですね。
※実はこの作品…イントロのストリングスに、某アーティストの「後発」楽曲が酷似していて一部で物議をかもした作品。
それはさておき、井野洋樹(Vo/Gt)氏は音の使い分けがいいですよね。ファズを中心にしつつも、こういうポップスでは引きながら、存在感のあるギターサウンドを作っていると思います。
ほんでまたこの曲も歌詞の言葉が繊細なんですよね。
僕らはイメージを抱きすぎず
ありふれた緊張感が欲しいんだ
街のざわめきで突き抜ける
全部忘れて 高まった鼓動見せて(八月のエコー/YOGURT-pooh)
八月が終わると、また新しい季節が始まるじゃないですか。新学期とかね。こういう時期って、期待と不安が入り混じったような緊張感を「毎度」味わいますよね。楽しみなような、イヤなような、って感じでね。
だけど、これをイチイチ意識していくんじゃなくて、この高揚感にそのまま、乗っていく、っていう、複雑な情景が浮かぶんですよね。ただ、言葉にはしないだけで、みんな持っている普遍的な感情だと思うんですよね。
こういう「芸の細かさ」が、この楽曲の魅力だと思いますね。
- アーティスト: YOGURT-pooh,井野洋樹,本田優一郎
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 2002/08/17
- メディア: CD
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■いま、時代が追い付いてきた作品。
このアルバムは全体を通して、打ち込み中心のバンドサウンドなど、この当時としては意欲的な試みがなされています。そしてそのどれもが、遊び心に溢れていて、楽しい。正直、いま時代が追い付いてきた印象すらあります。というか、今なら売れるんじゃないかとホンキで思う作品です。
乳清は捨てるものじゃない、と時代は変わったわけですしね。
★この記事で紹介した楽曲はこちら。
<アルバム>
<楽曲>
- アーティスト: YOGURT-pooh,井野洋樹,本田優一郎
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 2002/08/17
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