いちいち、音楽を考える。

音楽はフィーリングも大事だけど、いちいち考えてみたくなるんです。

耳というより、「頭」にダイレクトに語りかけてくる音楽。(チョモと僕は柵の中/Qomolangma tomato)

耳をスルーして、頭にガツンとくる。

 

チョモと僕は柵の中/Qomolangma tomato 2007年4月11日

through your reality
surface noise
無垢ではない
深夜徘徊
ネタのないパブリック
商店街
jyara jyara
蒸発のイメージ
capacity

チョモランマトマトとの出会い…というか、名前を一番最初に聞いたのはサマソニでのステージが絶賛されている日本人バンドがいる、みたいな話だったかと思います。ただ、その後すぐ「売れたり」とかしたわけではなかったので、なんとなく、名前は気になるけどスルーしている、ってな状態で月日が流れていったんですよ。

そんなある日。大学3回生ぐらいのころか…うちの大学では夏と冬に軽音団体が全体でやる「フェス」みたいなイベントがあるんですけど、そのイベントのコピバンで他サークルと「被った」のがこのチョモランマトマトだったんですよね。

ちなみに、被るっていうのは「バカ売れ」しているバンドなら正直よくあるんですよ。ホルモンとかラッドとか、ようかぶってたしね。でも、チョモランマトマトは正直、売れているバンドではなかったので、「おぉ?」ってなったんですよね。そんなことが起こるほどならもう聞くしかない…と思ってチョモランマトマトのコピバンのメンバーから借りて聴いてみたんです。

…すると、ものすごい熱量の音が耳ではなく、「頭」に飛び込んできたんですよね。

■すげー説教されているんだけど、圧がすごすぎて聴いちゃう。

 

まず、この一回聴いたら頭の中をずーーーっとめぐり続けるギターリフが素晴らしいですよね。このテーマをメインにゴリ押ししても全然OK、っていうぐらい説得力のあるリフだと思います。

で、この説得力が高い理由って、やっぱり楽曲を覆っている「頭の中でのグルグルした葛藤」が、繰り返される歪んだメロディーのリフとガッチリフィットするからなんだと思うんですよ。

言葉並べてもどうしようもない 喰ってかなきゃ意味は無い
そういうことが身に染みてないから
簡単な御託を言う偽善者パンクスは増えるんだ
一時の至福と共感を得て オマエらどうやって生きる?
自分と対峙しろ 逃げるな!自分から逃げるな!
約40年間の労働から オマエらそうして逃げているだけ
Don't blind yourself. Don't work head.
But don't say any exaggeration and fiction. Face to face with yourself.

(through your reality/Qomolangma tomato)

このメッセージの中にこもっている「怒り」とも、ギターリフがリンクしてますよね。なんというか、すげー説教されているんだけど、圧がすごすぎて聴いちゃう、っていう感じ。これを音楽で表現できるのって単純にすごいと思うんです。

しかも、この「怒りに満ち満ちた」歌詞も「消化」した上で書かれているのが個人的にはイイと思うんですよね。どうして消化できていると思ったかっていうと、オチはこのように締められているから、なんです。

こつこつオマエら社会貢献 その行く先はこうした戦争
貧困な社会を生む原因は 何も政治家だけのせいではない
こつこつオレら社会貢献 陽が沈む間にこうした戦争
貧困な社会を生む原因は
どうにもこうにもオレのせいな気がした夕暮れ時だったんだ

結局のところ、キレられっぱなしだとなんというか、居心地の悪さがあるじゃないですか。そりゃそうなんだろうけど…って感じでね。

だけど、最終的に「誰か」のせいで貧困な社会になっているんじゃなくて、自分が貧困な社会を作り上げているんじゃないか、っていう結論まで至っているところがなんというか、ホッとするんですよね。いわば救いがあるというか。

実際問題、こういう「社会問題」をテーマにしていて仮想敵と見立てた相手の攻撃だけで終わってしまうのと、もしかしたら自分自身にも非があるのかもしれないってところまで通過して意見を述べるのとでは、まったく言葉の響きが変わってくるじゃないですか。

この楽曲は後者だからこそ、飽きずに10年近く聴き続けてこれているんやろうなぁと思います。なんせ、一聴するとかなりの回数リピートしたくなる楽曲だと思います。

through your reality

through your reality

  • チョモランマ・トマト
  • オルタナティブ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

■「自問自答からの葛藤」を、リアルに表現した一枚。

このアルバムは、全体を通して「自問自答」からの「葛藤」っていう構成で成り立っています。その自問自答感が、繰り返されるフレージングによってリアルに表現されています。ブワーっと吐き出される言葉の中からも頭が反応するフレーズが満載です。

私がグッと来たのは「深夜徘徊」の「いい加減な人間がいい子に育っても仕方がないのかな」とか、「商店街」の「車の前を横切ってやりたい」とか。こういう衝動が潜在的に「ある」んだ、ってところにドキッとしたんです。おそらく、グッとくるところはみんな違うはず。

いま、モヤモヤして鬱屈とした感情を抱えているって人に、ぜひ聴いてほしい一枚ですね。こういうことを表現してくれる人がいるんだ、ってことを確認するだけでも、気持ちが幾分かスッとするし、ホッとすると私は思うんですよね。

 

★この記事で紹介した楽曲はこちら。

<アルバム>

(チョモと僕は柵の中)

Qomo to Boku Wa Shigarami No Naka

Qomo to Boku Wa Shigarami No Naka

  • チョモランマ・トマト
  • オルタナティブ
  • ¥800

<楽曲>

through your reality

through your reality

  • チョモランマ・トマト
  • オルタナティブ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

深夜徘徊

深夜徘徊

  • チョモランマ・トマト
  • オルタナティブ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

商店街

商店街

  • チョモランマ・トマト
  • オルタナティブ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes