哲学と、ポップ。
100s/中村一義 2002年9月19日
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キャノンボール
グッデイ
いつだってそうさ
♪
Yes
<DAS>in
ラッタッタ
セブンスター
スノーキング
sui
ZEN
<DAS>out
メキシコ
新世界
ひとつだけ
中村一義氏も、私の「ロック黎明期に出会って当初理解不能だったけど聴いていくうちにはまっていったシリーズ」の一角を担うアーティスト。「10年にひとりの逸材」と言われていましたけど、本当にそうやなぁと思いますね。楽曲センスもしかり、あの汚れ0の声*1も。
このアルバムはそんな彼がソロからバンド活動へと機軸を移すきっかけとなった一枚。ポップでありながら、時々飛び込んでくる「ドキッ」とするような哲学世界がグッとくる一枚です。それでは、おススメの3曲、紹介していきますね。
■しゃべんなくたって、伝わることもあんだろ?(キャノンボール)
とにかくポップ。キラキラとまっすぐ、光が飛び出すような勢いのあるナンバー。
この曲、何回聴いても言葉に表そうとすると陳腐になるなーと思っていたんですが、冒頭の歌詞にある意味救われる格好になりました。
そんなにさ、しゃべんなくたって、
伝わることもあんだろ?
僕は死ぬように生きていたくはない。
僕は死ぬように生きていたくはない。(キャノンボール/中村一義)
彼が一番伝えたいことって、おそらくはコレだと思うんですよね。この言葉が一番、明快に飛び込んできますしね。哲学的な言葉って、ごちゃごちゃしがちなところもあると思うんですけど、彼の言葉は明快でシンプル。だからこそ、ハートの深いところにリーチしていくんだろうな、ってことを想わせてくれる一曲です。
■彼の出す音を、信じたいと思う理由がここにある。(セブンスター)
こちらは冒頭から歌詞がぶっ飛ばしてますね。
クソにクソを塗るような、
笑い飛ばせないことばっかな。
それが人の姿とはいえ、
夢を見て、叶えたって、いい。(セブンスター/中村一義)
当初聴いたときは、こんなハードなことをそのままぶちまけてるなんて思いもしなかったんですよね。ある意味、これは中村氏のいいところのひとつだと思います。リスナーが一段踏み込んで、メッセージを「主体的に」拾おうとしてようやく、言葉に辿り着けるってところがね。
この曲も、コアで伝えたいメッセージはものごっついシンプル。
心に本当でいたい…、約束だもんな。
自分自身の心を裏切らないこと。それを自らに課している中村氏。現在の彼の活動の様子を見ても、それはあくまで守られているんじゃないか、と感じます。ある意味カリスマのような存在ではありますけど、それを利用してスターダムにのし上がってやろう、みたいな野心は感じず、淡々とマイペースにリリース活動もしている(しかも、セールスも安定している)感じですしね。
こういう、自分を裏切らない、正直な生き方ってかっこいいと思いますね。だからこそ、いちリスナーとしても、彼の出す音を信じていたい、と思うわけで…。
■「そこにある、自分」だけは、ずっとそばに、いる。(新世界)
この曲は今まで紹介した中でも最も哲学的、かつ、言葉だけでは理解しにくい部分も多い曲かなと思います。ただ、もはやこの深遠なる美しいサウンドで十分「新世界」というフィーリングは伝わってきますよね。
で、言葉だけでは理解しにくいってさっき言ったばっかですが、この言葉に救われる人は結構多いと思うんですよね。
予想以上に、
予想以上に、
夢は夢で過ぎてく?
でも、どうだろう?
残るだろう?
そこ、ひとつ。
君さ。君の灯り。(新世界/中村一義)
夢のように、どんな時間であれ、自分の外側にある世界はどんどん流れていきますよね。だけど、それでも「そこにある、自分」だけはずっと、そこにいるわけですよね。「セブンスター」とも繋がってきますけど、この「そこにある自分」を裏切らずに、心のままに進んでいけば、自分を見失わずに生きていけると思うんですよね。
そんな「人生のガイド」となるような光を灯してくれるような楽曲です。
■哲学を難解にしない、突き抜けたポップネス。
聴いていただけると分かるかと思いますが、哲学的でありながら、不思議と厳しさのようなものは感じない一枚です。それはやはり、この突き抜けたポップネスがなせる業なのかなと思います。「楽曲がポップだから好き」っていう、いわば哲学的な部分をすっ飛ばして聴くことも可能な一枚ですしね。
ただ、私は彼の「哲学」にもぜひ、触ってみてほしいなと思います。生きる上でのヒントに繋がってくる、そんな光を感じる一枚です。
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<楽曲>
*1:それでいて実は超がつくヘビースモーカー。マジかよ。