聴くたびに、新たな発見をする一枚。
LOVE SCULPTURE/CARNATION 2000年2月19日
MOTORCYCLE&PSYCHOLOGY
FUNNY
幻想列車
流星のピリオド
恋するためにぼくは生まれてきたんだ
蜘蛛のブルーズ
LEMON CREME
センチメンタル
壊れた船
REAL MAN
Forever Love
LOVE SCENE
カーネーションとの出会いはたしか、テレ東の深夜にやってたチャート番組で目にしたことだったかと思います。当時はまだ、小6でしたかね。キラキラしたポップな音楽に「おっ」って思ったのを思い出します。ただ、当時はタワレコやらが身近な存在ではなかったし、レンタルショップでも見かけなかったので、結局気になりながらも音源を手に入れることが出来ず、聴けずじまいのまま長―い時が流れていったんですよね。
その長い時ってのは、具体的に言うと10年以上。その間にギターを弾くようになり、バンド活動をはじめ、バンド活動がご無沙汰になって…っていう一連の流れはもちろんのこと、単純な話、10代前半の「子供」としか言いようがないところから、一応制度上は「大人」として認められるラインを越えて…って期間なので、いかにロングスパンか…ってことを実感します。
ただ、実際問題、カーネーションに触るのは「いま」でよかったんじゃないか、と思います。おそらく、小学生が触るには難解だったようにも感じるんでね。(ちょこちょこ入ってくるビーチボーイズやヴェルヴェットアンダーグラウンドら、先人たちへのオマージュも理解できなかったでしょうしね。)それぐらいにアダルトで、哲学的な内容になっています。ですが、その難解さの中にも、ぼんやり、輪郭は曖昧だけれど、確かに感じる「幸福感」があるのがこのアルバムです。
それでは特におすすめの3曲についてお話ししたいと思います。
■「幻想」のようなロマンあふれる想像力を掻き立てる一曲。
ギターの枯れたトーンが哀愁を誘うナンバー。この楽曲は描写がホントにロマンティック。
ぬけがらのようにたたずむ
厚いカーテンに巻かれて夕陽が苦悩に悶える
どんよりと深く息をしてみる
風はピタリと動きを止め街の色は流れる(中略)
指で触れた地図のどこかで
ふいに消える煙のように
ぼくは静かに目を閉じる
可能な限り思い出すのさ
幻想列車の到着を待ちながら(幻想列車/CARNATION)
ポジティブではない過去のことを思い出している、というシンプルな「誰でもやること」を、共有できるかできないかギリギリのラインの言葉のチョイスで、ぼやーっと、それこそ「幻想」のようなロマンあふれる想像力を掻き立てる直枝政広氏のライティング能力はホント、芸術的だと思います。サビ終わりのロングトーンも鳥肌もの。
夕暮れどきにピッタリな一曲だと思います。
■悩みの複雑さを、複雑なまま表わせている、一筋縄ではいかない楽曲。
ポップではあるんだけど、一筋縄ではいかない複雑なアンサンブルが「唸らせる」ナンバー。全体的に隙間は空いてるんだけど、その中身はタブラやシンセドラム(ゲストでASA-CHANGが参加)が入っていたりと、音数自体は実は意外と多い…構造が多面的、ですよね。
しかし、この曲もまた、歌詞が複雑。
永遠の謎の中
でたらめに歩きながらも
ついに部屋のガラクタとなる(え?)果ては遠い海で
平泳ぎで笑えるのかどうか
重要な問題なんだな(恋するためにぼくは生まれてきたんだ/CARNATION)
ちなみに「え?」も原本通りです、念のため。
この歌詞はほんっと難解だなぁ…と思ってたんですけど、単純な話「悩んでもどうにもならんね」っていうことと、そして「悩みながら、どうにかしたいわけではなくてそのプロセスを味わいたい」っていうことなのかな、って感じました。
この「悩む過程」の複雑さを、複雑なまま、写実的に表わせている楽曲だと思いますね。
■いままさに、彼の謎と私は戦っている。
この曲が、私とカーネーションを繋いだ一曲です。このキラキラがあったからこそ、10年以上っていうロングスパンが空いても、忘れることはあっても記憶から消え去ることなくたどり着けたんですよね。
しっかし、この曲はホントにメロディが抜群にいいなーと思います。単純に、理屈抜きで好きですね。なんせ、私のiTunes再生回数1位の楽曲(200回前後)ですから。実はコピーしてたバンドの音源よりも聴いてるっていう…
先ほどの「恋するためにぼくは生まれてきたんだ」とはリリース順は前後しますけど(当曲の方がリリースは先)、アルバムの中の曲順で聴くと「吹っ切れた感」を感じますね。
これからのことは想像できない
来たるべき時の流れにまかせて
遊んで暮らそうつまらない事やときめく事
ほら はかり知れないとみんなが感じる
家から飛び出そう(REAL MAN/CARNATION)
どうにもならんことは、どうにもならんから、流れに身をまかせるっていう潔さを感じますね。悩んだ過程ありきだからこその、無の境地に近いものを感じますね。
ほんで、この記事を書くにあたってじっくり歌詞を見直していたんですが…ハッとさせられましたね。
REAL MAN
彼がぼくの中で目覚める時がやって来るのだろう
REAL MAN
彼がぼくの事に気が付く時がやって来るのだろう
REAL MAN
彼がぼくの中で悩める時がやって来るのだろう
REAL MAN
彼がぼくの事を忘れる時がやって来るのだろう
REAL MAN
彼がぼくの謎と戦う時がやって来るのだろう(REAL MAN/CARNATION)
まさに、今、私のやっていることがこれに近いよなーと思いましてね。
いち「ファン」としての私が、直枝氏の音楽に目覚め、「この曲が好きだ」っていう感覚に気が付き、一方で直枝氏は「ファン」というかリスナーの反応やらで悩んだり(ってこともあるのかな)、私がふと違うことを考えたときにはいつの間にか直枝氏を忘れ、その一方でいま、直枝氏はどういう情景を描こうとしたのだろう?という謎と私は戦っている、っていうことにふと気づいて、それこそやっすい言葉でアレですが運命めいたものを感じましたよね。
いろいろお話ししましたけど、単純にいい曲です。ホントいっぺん聴いてみてほしい一曲です。
■聴くたびに新しい発見がある一枚。
このアルバムは一見、音だけを聴くととっつきやすそうに見えますけど、中身は一筋縄ではいかない部分もあります。当然っちゃ当然ですが、私がいまお話ししたことも一解釈に過ぎず、それこそ明日には変わっているようなことかもしれません。
ですが、だからこそ聴くたびに新しい発見がある一枚だと思います。その「発見」がもしかしたら、幸福感へと繋がっているのかもしれないですね。
私自身、今後も一生聴いていくであろう一枚だと思いますね。
★この記事で紹介した楽曲はこちら。
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