「完成度」、ほんっと高いです。
I co Y/sumika 2014年11月12日
ソーダ
ふっかつのじゅもん
リグレット
MY NAME IS
リフレイン
イノセンス
彗星
このバンドとの出会いも、こないだお話ししたクウチュウ戦と同じタイミング。クライアントさんがカラオケで歌っていたんですよね。
で、ぶっちゃけた話、最初は「ゲ、また四つ打ちかよ…」って思ったんですよ。簡単に乗れるインスタントビートとして氾濫しまくっているじゃないですか、昨今の日本では。そりゃー、たまにやるぐらいなら別にいいですけど、「四つ打ちばっかかよ!」ってバンドも私の印象では多い。だから、最初はもう、閉店ガラガラでしたよね、私の心は。
ただ、歌詞の世界観はおもしろいな、って一聴したときでも思ったんですよね。だから、閉店しながらも、少しシャッターから店の中の光が漏れるぐらいの状態にはなっていたんです。
そんなこともあってか、クライアントさんが以下の曲をカラオケで歌っているのを聴いたとき、「おっ、こんなこともできるんや!」って思ったんです。シャッターちょっと開けといてよかった。
注)今回紹介しているアルバムの楽曲ではありません。ちなみに、一番右は、一時「伝わりにくいモノマネ選手権で席巻した、モノマネ王子・keyの小川貴之。
これだけ上質なポップスが紡げるなら、もしかして、あの「四つ打ち」ソングも凄い曲なんちゃうか?と思い直して聴き直したら、すっかり虜になってしまったんです…
■「会心の一撃」は、戦った者の特権。
真っ先に思ったのが「うまっ!」ってこと。演奏面ががっちりかみ合っていて、なんというか…「雑味」がまったくないんですよね。だから「なんでこうなるかな…」みたいにポイントがブレるタイプの違和感がなく、すーっと聴けるんですよね。
アレンジもほぼ同じことはしておらず、奥行きがあって「詰められた」形跡がしっかり見えるのもいいなと思います。特に、冒頭の不協和音コーラスは「毒喰らってしまってもこらえ」る様子がうまく表現できていると思いますし、曲が進むにつれて「仲間、こんだけおるんやぞ!」と言わんばかりに音が厚みを増していく様子など、高い描写スキルも光ります。あと、全体コーラスを効果的に使えていますよね。歌いたくなりますもん。ヘイヘイ!そんでこのサムネもずるいっすね(笑)
で、この楽曲面でも十分すぎるぐらい「シャッター閉めててすんませんでした状態」なんですけど、「ふっかつのじゅもん」はなんせ歌詞が素晴らしい!
錆びた剣ならあるのさ
ずいぶん前に携えたオギャーって
生まれた時には
もっと光っていたっけな(ふっかつのじゅもん/sumika)
錆びた剣って、いわば「自分自身の心」の象徴ですよね。いろんなしがらみやらを経験していく中で、どんどんその剣を使わなくなって、しまい込んで、光っていたはずの剣がさびていったわけですよね。その結果、「勇者候補」であったはずの私たちはどんどん脱落していって、立ち向かうことを止めちゃうわけです。
でも、そのまま逃げてモンスターを倒さなかったら、いつまで経っても変わらないじゃないですか。逃げてばっかりで剣持って戦わなかったら、錆びる一方なわけですよ。だからこそ、サビではこう歌われているんですよね。
ヘイヘイ 今日も明日も
信じた光を目指していくそれでアイヤイヤイヤイ
サルになって
会心の一撃見舞う
錆びた剣が光り出した
サルになって何も考えずにオラーっと剣をもって立ち向かっていけば、それが会心の一撃になるかもしれないわけですよね。その「よっしゃキター!」っていうのが自分の心の象徴である剣を光らせていくことに繋がっていくんですよね。
なんせ、とにかく戦え!ステージに上がれ!ってことをスマートな楽曲で伝えてくれていますよね。本当に素晴らしい楽曲だと思います。
■「ソーダ」というワンテーマで、描き切るところが素晴らしい。
曲順的には前後するんですが、こちらは冒頭を飾るナンバー、「ソーダ」。
この曲の素晴らしいところは、「ソーダ」からの着想力かなと思います。ソーダ自体はモチーフとして使われること自体は結構多いものだと思うんですけど、その「モチーフ」一発でストーリーを丸々一個描き切っているところがすごいなぁと思いますね。
僕たちが
吐き出したガスは
無色透明 だったソーダ 泣いちゃいそうだ
君を思い出せる
ヒントも見つからないんだ(ソーダ/sumika)
お付き合いしている相手とのぶつかりあいのない「惰性」な関係を、「無味無臭なただの炭酸水」になぞらえ、もっとぶつかったりしていけばよかったなぁってことを描いています。ソーダの「泡沫」「淡泊」なイメージとしっかり噛み合ってますよね。
で、彼はその「惰性」ではない日々が大切なモノだったんだと以下で気づくんですよね。
どうせなら色ついて
匂いもして
もう迷惑だなって時々
そのシミみたいなものを見返して
僕は何度思い出して
君を嫌いになって嫌いになって
嫌いになって ってもう
なれるわけもないけど
迷惑だった「シミ」を見返して、嫌いになろう、嫌いになろうとするけれど、その「シミ」がいとおしい、ってことに、ソーダの泡が消えてから気づくんですよね。この後悔が、本当はこうしたかったんだ、ってことに気づかせていくんですよね。
そうだ 気が抜ける前に
僕はゆくよけむくじゃらを担ぐ僕は
君の家の前に辿り着き渇いていた
喉を潤すように
今、ベルを鳴らした
思い立ったが吉日、ですよね。気が抜けてしまう前に、行動を起こしたわけですよね。「渇いていた喉を潤す」ために必要なのは君なんだ、ってところまでストーリーが展開。
…うん、満たされ感ありますよね。
この「前段」までを描く楽曲は結構あると思うんですけど、オチまできちんとついているってところが消化不良感がなくていいですよね。ソーダのイメージに合う、爽やかな楽曲だと思います。
■元気の出る、素晴らしいポップ集です。
しっかし、ほんとこのアルバムは「さわやか」かつ「着想力」が高いと思います。ポップという一本の線で繋がっている上で、アプローチが全曲、微妙に異なっていてずーっと聴ける作品だと思います。
リア充っぽいバンドだ、と一蹴せずに、一度聴いてみてほしいと思います。
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